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🎊グッドデザイン賞を受賞しました

こんにちは。パイオニア(株)デザイン部の佐藤です。
ディスプレイオーディオDMH-SF900が2024年度のグッドデザイン賞を受賞することができました。

勇気と有機のあるデザイン

『デザインに関わる人が勇気を持って一歩踏み出し、しなやかに美しく、場面や場所に応じた有機的な考えと体制によって、アイデアを社会に実装していくこと。』
これが、今年のグッドデザイン賞のテーマです。デザインの評価は、クオリティだけでなく、応募作品の開発に対する姿勢や取り組みなど、見えない部分についても評価する形に変わってきています。今回はパイオニアのデザインメンバーが製品開発で取り組んできたことをご紹介します。

グッドデザイン賞公式サイト受賞概要:車載用ディスプレイオーディオ

デザインのポイント

1.     光と音による直感的なナビゲーション で、画面を注視することのない、安全なナビ情報を提供する
2. ルミナスバーが際立つシンプルなハードデザインで、「光」を情報としてドライバーに分かり易く伝える
3. ショートカットUIにより、Apple CarPlay/Android Auto使用時に車載機器を安全に操作できる
4. ブラインド操作が可能なハードボタンと、明解に視認できる静電ボタンの組み合わせで、運転中でも安全・確実な操作ができる

 デザインが生まれたワケ

車で使うナビ?スマホがあればそれでよくない?…と皆さんお思いでしょうか。この製品はスマートフォンを車で使う際、「UXデザイン」の観点から、運転中のドライバーの負荷を削減することを目指して開発してきました。
 
パイオニアでは日本国内だけではなく、北米、欧州、南米、アジア、アフリカなどさまざまな地域へ向けた製品開発をしています。近年どの国でもスマートフォンと連携し、Apple CarPlay/Android Autoのナビゲーションや音楽機能を使うことができる車載用ディスプレイオーディオが一般的になりつつあります。ナビゲーション機能自体はGoogleやAppleのナビに依存するため、われわれメーカー側でアレンジできる余地はあまりありません。それでも、この製品のUXを向上するために何かできることがあるのでは?と掘り下げていきました。

ルミナスバーを実現した経緯とその成果あれこれ

LEDの光を使ったナビゲーションは、他社を含めて過去に例がない新しいチャレンジのため、トライ&エラーを繰り返しながらUX向上に取り組んできました。 プロジェクト開始から製品開発期間の各フェーズにおいて、価値を検証するための評価やユーザー調査を実施しました。こうした検証を繰り返すことで、画面を注視することなく、光と音で直感的かつ安全にナビ情報を取得できる最適なバランスを実現させていきました。

また、ルミナスバーをセキュリティやエンタメとして有効活用するアイデアも搭載しています。
セキュリティ機能(※1)では、駐車中にルミナスバーの両端が赤く点滅し、監視していることを車外に伝える防犯機能を搭載しました。これにより、北米はもとより日本でも近年ニュースになっている車上荒らしや車両盗難を未然に防ぐ効果があります。(※1北米限定機能)

エンタメ機能では、特に北米のニーズを捉え、ルミナスバーのLEDが音楽に連動して光る機能を搭載しました。低音帯域に連動して光るパターンと全帯域に連動して光るパターンを用意し、ドライバーの好みに合わせた効果的な光り方を実現しています。音楽に合わせて光るだけ…と思われるかもしれませんが、実際に体験すると気分があがって楽しい気持ちになること請け合いです。

ショートカットUIを実現した経緯とその成果あれこれ

この製品では開発初期から各種プロトタイプを作成し、ユーザー調査を行い、UX/UI検証と改善に取り組んできました。初めに取り組んだのがApple CarPlay/Android Autoの画面と比較した、タッチエリアと文字サイズの検証です。運転中でも読める/操作できる文字サイズ、ボタンのタッチエリアは…といった基本的な使い心地から検討を始めました。
 
また、階層が深くてアクセスし難い機能をワンタッチで操作できるショートカットUIでは、ナビゲーション画面を表示したまま、ワンタッチでラジオや音楽のイコライザーを操作することができるよう、デザイン、企画、技術の関係者と意見を交わしながら、機能面での使い心地についても検討・検証を行いました。
 
車載ディスプレイと一緒に使用するスマートフォンアプリの世界観の統一にもこだわり、シンプルで使い易いUIデザインを実現しています。
このようにApple CarPlay/Android Autoとともに使うことを想定した、ドライバーディストラクションの少ない安全なUI/UXが競合他社との大きな違いとなっています。

ハードデザインにおけるデザイン検討とUX向上のあれこれ

(左)3Dプリンター品で音量ボタンの操作性を検討している 
(右)グラデーションイルミを検討している

カーAVのアフターマーケットでは主張が強いデザインが好まれる傾向にありますが、本製品の外観意匠は主役であるルミナスバーを活かすため、シンプルでシックにまとめています。通電時のイルミネーションによる華やかな存在感と、消灯時の車室内とのマッチングの両立を目指した仕上がりにしています。

また、最も頻繁に使う音量操作の物理ボタンを本体上部に配置し、画面を見ずとも指先の感触でボタンを押すことができるようにしました。触感での知覚を想定し、ボタンの形状や凸量を細かく調整し、最適な形を実現しています。

ディスプレイオーディオでApple CarPlay/Android Autoを使用すると、ソフトウェアの制約上、スマートフォンアプリと車載機のホーム画面が、それぞれ別に存在するという問題があります。この煩わしさを解消するため、本製品はそれぞれのホーム画面をワンタッチで表示できるハードボタンを搭載しました。2つのボタンが対になっており、間をグラデーション調のイルミで繋いでいます。ソフトウェア上の制約をハードウェアの構成で解消することができました。

おわりに

このようにUX、UI、プロダクトの各デザイナーがそれぞれの開発フェーズで開発関係者と協議を重ね、時には厳しい要求をなんとかのんでもらいながら、力を合わせて進めてきたのがこの1Dメインユニット「DMH-SF900」という製品です。車の中でスマートフォンを使うなら、この製品があったほうがより安全で楽しいドライブ体験ができるんです。
 
パイオニアのデザイナーはじめ、それぞれのプロフェッショナルが知恵と情熱をもって仕上げたこの製品を、たくさんの方々が使ってくれることを祈りつつ🙏🏻製品開発の紹介を終わります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!