未来の移動体験を創るモビリティAIプラットフォーム 「Piomatix」とは何か聞いてみた!
パイオニア株式会社 公式のnoteをご覧の皆様、こんにちは。グループCDO(最高データ責任者)をしております、保田です。
保田:
本日は私がインタビュアーとして、先日発表したパイオニアの新しく、しかもコアなテクノロジーである「Piomatix」(パイオマティックス)について、パイオニア株式会社 SaaS Technology CenterのPiomatixコアテクノロジー統括グループで統括部長をされている村田さんにお話を伺っていきたいと思います。
村田さん、本日のインタビュー、よろしくお願いします。まず最初に村田さんの自己紹介をお願いします。
村田:
SaaS Technology CenterのPiomatixコアテクノロジー統括グループという組織で統括しています村田です。
1992年、今からちょうど30年前、パイオニアに入社しました。ちょうど翌年にバブルが崩壊するという頃でしたね。
当時、ソフトウェアというものが始まったばかりで、私はエンジニアとして、そのソフトウエア開発の組織に配属されました。
これまでカーオーディオやナビを開発、その後はスマートループ(※1)の立ち上げなど、新しいことをどんどん立ち上げる先行開発の経験をしました。
当時はみんなで「こんなの出来るんじゃない?」など思いついたアイデアをどんどん言いながら、1-2週間で動くところまで作ったりしていまして、その後、ソフトウェア開発の課長、部長を経て、現在に至ります。
(※1:スマートループ:パイオニアが2006年より提供するプローブ型渋滞情報サービス)
保田:
ありがとうございます。
当時から活発にアイデアを出されていて、クイックにそのアイデアを実際のモノにしてしまうという、まさにエンジニアとして一番楽しい時間を過ごしてこられましたね。村田さんは生粋のエンジニアですね。
Piomatixって何?
それでは本題に入っていきたいと思います。
パイオニアは、2022年2月にNP1という新しいプロダクトを発表し、実はそれと同時に、NP1に初めて搭載したPiomatixというテクノロジーを発表しましたよね。ここでnoteをご覧いただいている皆様に、Piomatixとは何か?を一言で言うと、どのようなテクノロジーなのでしょうか?
村田:
パイオニアのビジョンに「未来の移動体験を創ります」というものがあります。Piomatixは、モビリティ領域のAIプラットフォームとして、このビジョンに沿ったコアとなるテクノロジーで、このPiomatixを初めて搭載したのが先日発表したNP1になります。
保田:
このPiomatixは、まさにパイオニアのビジョンを実現するための、いわば心臓のような役割を担うもので、パイオニアのコアテクノロジーとして位置付けられているということですね。
Piomatixのコンセプトは、どのようなものを掲げているのですか?
コンセプトって何?
村田:
車での行動というのは、実は運転という行動に縛られていますよね。また、家や学校、会社などの様々な空間がある中で、車の空間はものすごく制約があると思っています。その制約がなくなり、単純な移動時間とは異なる豊かな時間に変わるサービスを目指していく、これがPiomatixの基本コンセプトになっています。
保田:
たしかに、運転中はずっとハンドルを握り続けないといけないし、いつも音楽やラジオを聴いていたり、ミラーを見ながら前後左右の安全を確かめるなど、車での行動はとても限定的ですよね。
このPiomatixという言葉は造語であると理解していますが、この名称に至った由来や背景などを教えてください。
「Piomatix」という名称の由来は?
村田:
Piomatixの開発当初は、「Pioneer Informatics Architecture」という名前で、それぞれの頭文字から略してPIAと呼んでいました。それからNP1をリリースするにあたり、これがパイオニアのコアテクノロジーであることを正式に外部公開するために、元々あったPioneerとInformaticsを掛け合わせ、Piomatixという言葉が生まれました。
保田:
PiomatixのPio(パイオ)という文字・発音は、パイオニアを想起させますね。パイオニア社員からすると親しみをもちますね(笑)
NP1の発表時にPiomatixに関するコンセプトムービーがYouTubeで公開されたので、多くの方に観ていただき、このパイオニアのPiomatixというコアテクノロジーを知ってもらえると嬉しいですね。
このPiomatixの最も優れているところはどのようなものがありますか?
最も優れているところって何?
村田:
最も目立つ部分は、やはりNP1の特徴である「音声」なのですが、実は一番コアとなるものは、運転状況を推定したり、目的地やドライバーの好みの推定をするエンジンなんですね。
例えば、何も気にせず一方的に話す音声インターフェースがあったとすると、ドライバーの状況関係なく話しかけられるので、気分良いものではありませんよね。
しかし、このPiomatixのコアエンジンは、ドライバーの運転状況や好みなどを把握し、適切なタイミングで適切な情報を提供してくれる、まるで助手席の同乗者が話しかけてくれているようなところを目指し、開発しています。ここは優れているというより、これからも継続して優れていかないといけない部分ですね。
保田:
今のお話にあった、いくつかの推定するエンジンというものは、具体的にどのようなものなのでしょうか?
Piomatixの推定エンジンとは?
村田:
まず推定するエンジンは3つあります。
1つ目は、運転者の状況を把握する「ワークロード推定エンジン」です。
これは、Static/Dynamic/Personalという3つの軸で進化させています。元々、地図の解釈技術というものをパイオニアは行っていて、その地図データに対して、「この道は慌ただしい」とか、「この道は慌ただしくなくゆっくり走ることができる」という道路状況を定義します。
次に「これから首都高速を走るから話しかけないで」というようなドライバーの状況を見極め、慌ただしくて余裕のない運転状況の場合は、車載端末からの発話を控えるなどといったことが出来るエンジンです。
2つ目は、目的地などを推定する「走行推定エンジン」があります。
例えば、今運転している車の走行が、いつも通勤で走っている道や時間帯であるか、休日でいつもと違う道を使って遊びに行っているかなど、どのような道をどのような目的で走っているかということを行動パターンから推定するエンジンです。
3つ目は、ドライバーの好みを推定する「インサイト推定エンジン」です。実はこれが一番難しいです。
ドライバーが運転時に何を欲しているか、例えば、お昼の時間に近づいたら「お昼食べなきゃ」とか、夕方になったら「子供のお迎えに行かなきゃ」など、人それぞれの行動パターンによって、その時に欲するインサイトって異なりますよね。
子供をお迎えに行った時に、仮に時間を潰さないといけなかったとしましょう。そうなったとき、「暇 時間潰したい」というインサイトが出ます。このエンジンでは、そのインサイトに対して「今いる周辺のスーパーでセールをやっていますよ」などの提案ができます。
車での行動や情報は限定的である為に人は自発的に動けない、ただ、その人の内在しているものを見つけるというものがインサイト推定です。
保田:
3つのコアとなるエンジンのお話はとても共感できますね。例えば、混雑している道路を運転している時に音声で発話されると「あー、もう黙って!」とか言うことって実際にありそうですよね。
推定にはどのような情報・技術を使っているの?
このような状況を推定するのは非常に難しいと思いますが、実際にどのような情報やデータ、技術などが使われているのですか?
村田:
ドライバーの通る道の比較であったり、カーブの難易度など、地図データから取るということが、第一としてあります。また、生活圏や非生活圏という推定もしていて、いつも走る近場の道であれば気楽に走っているが、新しい道だと緊張して色々注意しないといけなかったりなど、地図データや走行履歴などを元に推定しています。
走行推定では走行履歴をベースに、どのようなルートで目的地に行くかという個人統計と、全体としてこの時間帯にこういう道を通っているなどのデータを活用しています。
インサイト推定では、ドライバーがそこに行ったという立ち寄り地、目的地などを使います。例えば、あるドライバーが土曜日にプロ野球の球場に行けば、このドライバーは土曜が休みで野球好きかもしれないという推定が出来ます。
保田:
これまでのパイオニアが蓄積してきた走行履歴、地図データなどのデータアセットをはじめ、先日発表したNP1から新しく得られる情報を活用し、更に進化させることで、この3つのコアとなるエンジンは、どんどん賢くなっていくだろうと想像しました。
これらのエンジンを使って状況を推定し、その推定結果の活用出口に音声インターフェースを使おうと決めた理由を教えてください。
「音声」を使うと決めた理由は?
村田:
「ラリー」という競技を観たことはありますか?
実は、ラリーは新しい道をどんどん走る競技で、F1のような決まったルートがあるわけではなく、毎回ルートが変わります。
では、そういう時にラリーのドライバーは何を見て運転しているかというと、実はコ・ドライバーというナビゲーターが隣にいて、「◯メートル行くと、次に◯度の右カーブがある・・・」などの情報を全て言葉で教えるんですよね。
このような仕組みでやっていることは、もうみんなわかっていて、つまり、助手席の人が様々な情報を的確にドライバーに伝えてあげることで、ドライバーは運転に集中ができ、リスクを少なくすることができる。そういうことが一番大切じゃないかということで音声に着目しました。
保田:
ラリーという競技は知りませんでした。
走行する道が決まっていないところを走る競技だと、ドライバーからすると、どこを走ってよいかわからないですからね。
私たちの普段の運転に置き換えてみると、走り慣れていない場所で運転中にナビを見続けることは事故リスクも高まるので、なかなか難しいですよね。しかし、そんな時に今いる場所に詳しい方が横にいて教えてくれるのであれば、すごく助かるのと安心感がありますよね。
お客様にはどのようなメリットがあるの?
このPiomatixのテクノロジーですが、実際に利用いただくお客様にはどのようなメリットがありますか?
村田:
例えば、助手席に同乗者がいる時、スマートフォンで色々調べてドライバーに教えたりするケースってあると思うんですね。Piomatixは、その助手席にいる同乗者が調べてくれたことと同じことをやってくれる、そのようなサービスにしていくことを目指して活動しています。
利用いただくお客様には、あのバーチャルな助手席の同乗者が、運転している自分の状況や好みに合わせて適切に案内やリクエストをしてくれる体験を味わっていただける、それがメリットですね。
保田:
このようなプロダクトって、ありそうでないですよね。例えば、家族や友達と旅行に行く時、運転中に「ここ調べておいて」みたいなことってあると思うんですね。それに一人旅の時は、運転中にスマートフォンを触ることは出来ないので、このPiomatixのテクノロジーを利用すると、今まで一人だと出来なかったことが出来るようになるというのは素晴らしいですね。
村田:
よく話していたのが、旅行の時ってホテルを目的地にナビ設定することがあると思うんですね。そうした時に、途中でコンビニに寄りたい、ガソリン入れたいと思うのですが、ホテルに近づいた時に調べたら「この先全くない!」っていうことが結構あるんですよね。
そのような状況を理解して気の利いたことを教えてくれるような体験をしていただけるようPiomatixはこれからも進化させていきたいと考えています。
保田:
痒いところに手が届く、最高のおもてなしですね。
最後になりますが、Piomatixのコンセプトムービーで、「多くの人と、“また新たな” 感動を」というメッセージが出しています。
村田さんの視点で、このPiomatixを活用し、今後どのような “また新たな感動” をお届けしたいと考えられていますか?
"また新たな感動" とは?
村田:
Piomatixが、車での時間を豊かにするハブになるというところを作っていきたいと考えています。
車の中で利用するデバイスは、プライベートなスマートフォンだと家族がいたりすると使うのに抵抗があったりするので、家族や友達など多くの人が利用するデバイスでなければならない、デバイスエコが必要だと思っています。
Piomatixとして、車で過ごす時間が、制限や拘束などから解放された自由な時間になることを体験していただけるよう、NP1の搭載をきっかけに、これからも進化させていきたいと思っています。
保田:
Piomatixというテクノロジーが今後も進化を続けることで、パイオニアのビジョンである「未来の移動体験を創ります」を実現させることに近づいていきますね。
noteをご覧の皆様には、まずこの「Piomatix」という名前を知っていただき、このパイオニアのコアテクノロジーが未来に向けて進化していくことに期待していただけることを願います。
村田さん、本日はありがとうございました。
村田:
ありがとうございました。
最後に
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