脱エクセル! ビジネス部門が「SQL」を書いてみたら・・・
パイオニア株式会社は現在、「メーカーからソリューションサービス企業へ変革する」ことを謳い、変革に向けて日々奮闘しています。
今回は、パイオニアのビジネス部門におけるデータ分析の取り組みについてお届けします。
中元:
よろしくお願いします。まずは簡単に自己紹介をお願いします。
鈴木:
よろしくお願いします。市販事業統括グループ、商品企画部の鈴木です。
私は入社以来、生産の仕事に長く携わっており、生産工場のヒト・モノ・カネの管理、また、パイオニアが持つモノを作る能力を他社に売り込む企画営業などもやっていました。最近までブラジルの生産工場の生産管理をしていました。
その後、2021年11月に商品企画に異動し、Pioneer Smart Sync(以下、PSS)というサービスに携わっています。
中元:
ありがとうございます。私も自己紹介しますね。2013年にパイオニアに入社後、2021年からSaaS Technology Center(以下、STC)データインテリジェンス部に参画し、データエンジニアとして各部門や全社横断的に関わりながらデータ活用の環境づくりをしています
グローバル展開アプリの課題 - 顧客の声を聴く
中元:
現在、鈴木さんが携わっているPSSとは、どのようなビジネスですか?
鈴木:
パイオニアブランドのカーオーディオに連携できるスマートフォンアプリです。
アプリをインストールして対応機器と繋げば、カーナビや音楽など、いつもスマートフォンで使っているアプリをメインユニットで操ることができます。例えば、音声サービス“Amazon Alexa”や無料で音楽が聴ける“Amazon Music Free”など多彩なサービスを車の中で楽しめます。
対応機器は世界150ヶ国以上で展開、販売台数は累計300万台以上、アプリは200万ダウンロードを超えています。
中元:
グローバルで展開しており、ユーザー規模も大きいですね。
鈴木さんは企画としてデータ分析に取り組まれていますが、元々どのような課題があったのでしょうか?
鈴木:
PSSはスマートフォンを使って様々な価値を提供していますが、現在の売上げの中心はモノ、つまりカーオーディオの販売で稼ぐことで、これまでパイオニアが得意としてきたビジネスです。
現在、「モノ × コト」への変革を目指していますが、ビジネスの下地がありません。今後、継続的にお金を払ってアプリを使ってもらえるのか、顧客が何に価値を感じているのか、より深く理解する必要があると考えました。
中元:
定性的な調査はこれまでもやられてきたんですよね。
鈴木:
各国のアプリレビュー分析などを行ってきました。また現在、欧米でのアンケート調査や、実際にアプリを使ってくれている人へのヒアリングを実施しています。
定量的な調査としてアプリからログは取って、ログ収集ツールのダッシュボードを見ることはしてきました。ただ、活用しきれてないのが実態で、細かなユーザー理解には繋がっていませんでした。
そこで、実際のログを自分で見て、利用実態を理解する取り組みを始めました。
初めてのデータ分析 - エクセルの苦労、SQLを書く決心
鈴木:
いざやろうとしたときにまず困ったのが、データの大きさです。
ログ収集ツールからデータをエクセルに出力する機能があり、出力したログを分析しようとしたのですが、まず1ヶ月分のデータを見ることも困難でした。
そこで条件を絞って出力し、なんとかソートや抽出をしていたのですが、簡単な集計をするのにも時間の浪費がありました。
中元:
データの総量としては10億レコード以上あり、サンプリング調査にもかなり苦労されていましたよね。
鈴木:
当然課題には思っていて、今後のデータ分析環境について計画していました。ちょうどSTCが発足したことで、データインテリジェンス部にも入ってもらい、そこで中元さんから、まず簡易的な分析環境でやってみる提案を受けました。
中元:
データ規模的にエクセル以外の分析環境は必須だと思いました。ただ、作り込んだシステムを用意したり、綺麗に集計されたデータを毎回提供するとなるとお金も時間もかかります。
そこでデータを投入すると分析が開始できる環境を用意するので、ビジネス部門でSQLを書いて分析してもらうことを提案しました。
実際は今までのやり方と大きく変わるので、抵抗もあるのではと思っていましたがどうですか?
鈴木:
たしかにこれまでSQLを書いたことはなく、やり方を学ぶ必要がありましたが、これからは新しい方法が必要だと思い、取り入れることを決めました。
中元:
私が環境を用意した後、早い段階で分析結果を出されていたと思います。
最初はかなり駆け足でSQLの説明をしましたが、こちらも学習コンテンツを十分に提供できないと思っていました。
どのように取り組まれたんですか?
鈴木:
実は最初全然使いこなしておらず、データを取り出す箱は手に入ったので、フィルターする構文で絞り込んで出力した後、さらにエクセルで絞り込んで見たりしました(笑)
中元:
かなり力業ですね(笑)
とにかく簡単でもいいので使ってみることから始めたということですね。
鈴木:
その後、こういうことがしたいけど、SQLでどう書けばいいか?と中元さんにクエリを作ってもらったり。
中元:
最初は私がほとんど書いたものを渡しましたが、段々このクエリのこの部分をどうすればいいか?と書きたいことも明瞭になっていきましたね。
鈴木:
今も毎日少しずつWEBサイトなどで調べて構文を覚えていっていますが、
実際にやりたいことをベースにお手本を見て学ぶことで理解が早くなると思います。
そういう点で社内に同じ課題意識をもって伴走してくれる人がいるのは非常に心強いです。
中元:
今回、これまで手が付けられていなかったデータを見ていますが、結果についてはいかがでしょうか?
鈴木:
まず1つ目が、機能利用の実態を比較する想定でいましたが、その前段でアプリが使われなくなるポイントがあることがわかりました。サンプリングでは見えていなかったことで、全データを統計処理できるようになったことでわかったことです。
2点目が、今後さらに深い分析をしていくために取得するデータの設計を見直す必要があるとわかりました。
今回理解したことを踏まえて次のモデルの仕様に反映を進めています。
中元:
仕様反映という次のアクションへの意思決定も早かったですね。これはビジネス部門が主導しているメリットだなと思いました。
鈴木:
まだ最初からやりたかったことの実現はこれからですが、
顧客の理解は企画として重要視しており、最初の打ち手が実行できたのはよかったです。
データ活用への挑戦 - カギはフットワークの軽さ
中元:
鈴木さんと仕事して思ったのが、すごく色々なことをやられてますよね。
データ分析はどのような考えで取り組まれたのでしょうか?
鈴木:
元々新しいものが好きで、新しい製品が出たら気になりますし、それがどうやって動いているかも気になるタイプです。
データ分析も各社取り組まれていると思いますが、世の中でやっていることが理解できて、仕組みが分かっていくのは楽しく感じます。それに、世の中の動きに追いつけるチャンスがあるならやってみたいと思いました。
中元:
新しいことへの興味やフットワークの軽さが仕事にも活きてるんですね!
最後に、今後の展望も教えてください。
鈴木:
商品企画としては今後PSSのディスプレイオーディオやナビへの展開・分析を考えており、ノウハウはそこでも活用したいと考えています。
また、元々いた生産系の部門に取り入れるなど、全社視点でも広めていければと思っています。
中元:
我々もデータ組織として、パイオニアに1人でもデータを使える人材を増やしていけるよう頑張っていきます!
本日はありがとうございました!
最後に
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