【連載】 現場のデータ活用を進化させる!Tableau社内活用インフルエンサー輩出プログラム始動!(前編)
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パイオニアの全社横断データ組織であるCross Technology Centerのデータインテリジェンス部グロースアナリティクスグループでマネージャーをしています森本智視(もりもと ともみ)です。
今回は、ビジネス現場でのデータ活用度を高め進化させていくために、現在、事業部門とデータインテリジェンス部がタッグを組み取り組んでいる "Tableau社内活用インフルエンサー輩出プログラム" の活動についてお話します。
活動の目的
ビジネスへのデータ活用において、私が入社した2021年以降、大きく変化したと感じることは、事業運営に客観的なデータを交え、目的のあるデータ取得にはじまり可視化や分析、データに基づく意思決定やアクションへと繋げる新しい習慣が生まれてきていることです。
パイオニアのバリューの1つである「先に動き、先へ行く」に基づき行動し、データ活用の習慣やデータ環境が整うにつれて更にやりたいことの幅が広がり始めました。
そして、プロダクトとサービス共に、新たなデータ活用に向けてモニタリングや分析、意思決定をタイムリーに数多く繰り返し行うことを実現するためには、データ組織だけでなく事業部門の中からもデータ活用できる人材を増やしていく必要性が出てきました。
単に事業部門のメンバーに "データスキルを身につけさせる" というものではなく、ビジネス目標の達成に向けたKPI設計やデータ取得設計、ダッシュボードの構築と活用。更には、これら一連の活動を自組織内で普及させ、現場での分析や効果検証においてTableauを導入することで、クイックに次のアクションに繋がるデータ活用を実現していってもらうことが、この活動の狙いです。
事業部門への提案
前述のような事業部門でのデータ活用度を向上させていくためには、事業部門とデータインテリジェンス部が同じゴールに向かい、目線を合わせて一致団結し、Tableauを用いてデータ活用ができる社内インフルエンサーを育成・輩出していく必要があります。
そのためには、事業部門に対して「やらせてください!」という意思表示だけでは理解が得られず話は進みません。事業部門のメンバーに時間を割いてもらい学んでもらうわけですから、活動目的とゴール、課題とその解決策、活動から得られる効果、スケジュールなど、「よし、この提案に乗ってやろう!一緒にやろう!」と納得してもらえるよう伝えていく必要があります。
膝を突き合わせる
アプローチとして最初の一歩は、意思決定者同士の目線合わせです。CDOの保田から事業部門の責任者・意思決定者である事業統括部長と対面での提案ミーティングを実施しました。前述のような内容をもって相手にしっかり寄り添い、期待値のズレをなくし同じ目線・同じゴールに向かって取り組んでいくことを伝え、合意を得ました。
また、提案の中では、参加メンバーには本活動に時間を割いて取り組んでもらうため、日々の業務における評価だけでなく、本活動でのプロセスや成果においても評価に組み込んでもらいたいということを伝えました。
合意を得た後、次の一歩を進めるため事業部内の部長陣へ提案内容を展開してもらい、改めて事業統括部長含む部長陣へ2回目の提案を実施。本活動に対して本気で一緒に活動してもらえる合意を得ることができました。
インフルエンサー輩出プログラムの始動!
事業部門にはさまざまなスキルや経験を持った社員が数多くいます。本当は全員に学んでもらえると良いのですが、業務調整などもあり最終的に事業部門の部長陣に4〜5名に絞ってもらい、事業部の代表としてKick offに臨んでもらいました。
(1) Kick offで互いに寄り添う
参加メンバーに集まってもらい、改めて活動の背景と狙い、取り組みの必要性や効果を伝え、この活動への参加意義とデータインテリジェンス部が確実に支援していくことをしっかり説明していきます。参加メンバーには楽しく学んでもらいたい想いはあるものの、それ以上に本活動そのものや得られるもの全てを "自分事" として捉え、モチベーション高く継続して取り組んでもらいたいので、1つ1つ丁寧に説明していきました。
「今からこれをやって、次にあれをやってください」だけを淡々と伝えても、双方の想いや取り組みは平行線を辿り、永遠に交わることなく良い成果は得られません。互いに "寄り添う角度をつける" ことで平行線が傾き交わると一体感が生まれてくるわけですから、参加メンバーには新しい経験とスキルの習得を通して、自身に変化を起こし成長に役立ててもらいたい、更にはデータスキル・経験を持つことで得られる(市場)価値など、まずは私たちからしっかり寄り添い、それに寄り添ってもらえるよう可能な限りわかりやすい形で伝え、消化不良にならないように進めていきました。
(2) データ活動を進めるための土台作り
Kick offの次は、いきなりTableauを使うことはせず、参加メンバーが担うプロダクトやサービスにおいて、データ活動を行うための土台作り(明文化、定義)をするワークショップを数週かけて行いました。
参加メンバーにとっては普段の業務と異なる内容であったこともあり、とても頭を悩ませているのが見てとれましたが、ここで躓くわけにはいきません。このフェーズは非常に重要で、事業のデータ活動がどの方角に向かい、どのレールの上を、何でどのように進んでいくのか、ハードルは何かなど、論理的に根拠を持たせながら事業のステークホルダーが納得できるレベルで定義づけする必要があります。
注意すべきところは、このフェーズはどこまでも検討できてしまうこと。柔らかいと上に載せるものがすぐ崩れ、ガチガチに固めると杭すら打てなくなります。そのため、データ活動をスタートする上でプロダクトやサービス責任者と最低限の基準を決めておく必要があります。
私がこのフェーズでとても良かったと感じたことは、数回実施した参加メンバー同士でのアウトプット発表の場で、積極的な質問からさまざまな意見が飛び交い、発表者はそれを受けてさらに磨きをかけ精度を高めていくことができた点です。結果、このワークショップにおける全員のアウトプットの質がとても高くなっていきました。
参加メンバーへのインタビュー
ここまで本活動の進め方についてお伝えしてきましたが、ここからは参加しているメンバーから本活動に関することや実際に感じていることなど "リアルな声" をお伝えしていきます!
森本:
まずは皆さん、簡単に自己紹介をお願いします。
新居:
新居(にい)と言います。海外新商品マーケティングの部門に所属し、市販カーオーディオ製品と連携して動作するPioneer Smart Sync(以下、PSS)というスマホアプリのPdMをしています。
高野:
はじめまして、高野です。私は入社から開発畑を歩んできましたが、2019年8月から事業部門に異動し、NP1の企画を担当していました。昨年4月からは、Innovation and New Product Developmentという新設部門にて車載用Wi-FiルーターのPdMをしています。
加藤:
私も海外新商品マーケティングの部門に所属しており、ディスプレイオーディオという車載器と連携するスマホアプリの企画を担当しています。元々営業として入社し、国内と海外での営業や駐在を経て、2021年から現在の部門に所属しています。
松本:
私はカスタマーファースト推進本部に所属し、NP1のアフターサービスやサポートセンターの運用支援業務をしています。
森本:
皆さん、自己紹介ありがとうございました。
まず初めに新居さん、高野さんのお二人に伺います。
ー この活動に対する "率直な気持ち" ー
新居:
私は「きたっ!」と思いました。
自分が担当しているアプリは、既に利用ログのデータ取得と蓄積を行っています。お陰様で利用ユーザー数も増えており、分析に利活用できるデータが一定量存在しています。
また、データインテリジェンス部(以下、DI部)の支援を受けながら、先んじてTableauを使い可視化に取り組んでいましたが、これまではDI部に依頼し可視化をしていくことが主な進め方でした。
自分自身でTableauを触り、可視化に取り組むことは今回初めての経験ですが、使いこなせるようになれば、企画検討のスピードを上げることができます。その結果、PDCAのサイクルを早く回せたり、より深い分析にも取り組めると思ったのです。
とはいえ、話をもらった際はポジティブな気持ちが8割、Tableauを使いこなせるかという不安が2割ぐらいあったのが正直なところです。
高野:
私は「きたっ!」とは思わなかったです(笑)
予算作成や他案件などでリソースが限られている中、「Tableauに使いこなすことが本当にできるのか?」という不安の方が最初は大きかったです。
ただ、PdMの役割として、データを元にPDCAのサイクルを回すことが必要と感じていましたし、他の誰かに任せられる仕事でもなく自分が取り組むべき仕事だと認識していました。また、上司の方からの後押しなどもあり、今回トライしようと決めました。
森本:
ありがとうございます。ご自身が関わっている事業でデータに関する課題について教えてください。
ー 事業の "データ課題" ー
新居:
課題は "スピード感" ですね。ユーザーがPSSアプリをどのように使いこなしているか、ユーザーと提供する側の我々の考えとの間にどのようなギャップがあるのかなどを把握したいと考えていたのですが、それを確認するためには、さまざまあるデータの中から素早く抽出する必要がありました。エクセルでも出来なくはないのですが、処理できる量の限界がきているのも事実でした。
高野:
車載用Wi-Fiルーターでは、データの取得をはじめ、DI部の支援でTableauでの可視化も進んでおり、モニタリング体制は出来つつありますが、モニタリングからアクションに紐づけて実行する部分を整備しきれていないのが課題でした。
これからは、よりアクションに繋げられるようにゴールを定めた上でデータ分析を実施していきたいと考えています。
森本:
ゴールから逆算していくことはビジネスにおいてとても重要ですよね、それを意識するようになった背景を教えてください。
ー "ゴールから逆算" を意識するに至った背景 ー
高野:
どの会社も同じですが、活用できるリソースは限られています。
ビジネスとして、どのようなゴールを達成する必要があるのか?を整理する必要があると感じていました。
最終的には売上を伸ばすことが重要ですが、売上を伸ばすためには色々な施策が考えられます。販促施策の強化などはわかりやすい例ですが、それだけをしていても十分ではありません。
ビジネス目標を達成するためにもデータ活用を通して解像度をより高めていくことが必要だと感じていました。
ー この活動を通して感じること ー
新居:
ワークショップでは、解決したい課題に対する打ち手をStep by Stepで言語化・整理をしていきました。
頭の中では色々と思い浮かんでいるのですが、実際に言語化すると上手くロジックが繋がらないケースがありました。ぼんやりと思っていることを実際に書き出しすことで、ロジックやストーリーの繋がりが弱い点があぶりだされ、補強できたことはすごく良かったです。
高野:
私もそれと近いですが、ゴールを達成するためのStepを積み上げてロジックを整理する方法は、これまであまり考えてこなかった内容なので、とてもためになったと感じています。ロジックが通ると納得感を得られたのが良かったですし、毎回1〜2時間で参加しやすいワークショップの開催回数も多く、DI部の皆さんが丁寧に支援してくれていると感じていました。
また、小さな変化ですが、エクセルでデータ分析する際、無意識にデータを "縦持ち" している自分に気づきました(笑)
このアクティビティを通して自分自身に意識変化が起きていることを感じられたのも嬉しかったです。
森本:
この活動を通して気づきや変化を認識されているのは私たちとしても嬉しい限りです。
ー これからの事業貢献や自身の成長について ー
新居:
今まで蓄積しているデータの分解と再構築を通して見える化を進めることで、ユーザー理解をより一層深めていきたいと思います。
エクセルでも分析できなくはないですが、扱えるデータ量に限界があったり、可視化に限界があったりします。その点、Tableauはデータ処理の心配は少ないですし、特にビジュアライズも優れているので、よりわかりやすい形で可視化し、変化や気づきを得ていきたいですね。
また、今まで企画検討や施策において長年の "経験" と "カン" に頼っている部分がありました。今後はデータを用いることで、客観的で納得度の高い企画検討や施策を行ったり、マネジメント層や販売会社の方々に理解を深めてもらえるようにしていきたいと思います。
高野:
個人としては、Tableauを使いこなせるようになりたいと思います。また、Tableauに慣れるだけではなく、KPI設計・仮説構築力・PDCAサイクルの運用などを経験し、これらの実績を積み上げながらデータ分析力も強くしていきたいと思います。
部門に対しては、車載用Wi-Fiルーターのビジネス目標を達成できるように事業や部門に貢献していきたいです。その過程で失敗することもあると思いますが、その失敗を失敗として片付けるのではなく、今後に向けた知見として事業部に共有・展開をするフィードバックサイクルができれば良いなと思っています。
ビジネスとして結果が出た話だけでなく、失敗も共有してデータに慣れ親しんでもらうことがインフルエンサーとしても望ましいと考えています。
前編の締めくくり
ビジネス現場でのデータ活用度を高めるために始動した "Tableau社内活用インフルエンサー輩出プログラム"。この前編では活動目的や事業部門との握り、ワークショップの開始に至るまでをお伝えしてきました。
次回の中編では、実際にサンプルデータを使い、初めて触れるTableauのハンズオンや体験の良し悪しなどついて、インタビューを交えながらお伝えしていきたいと思います。
引き続き、社内に一人でも多くビジネスにデータを活用できる仲間を増やし、企業としてだけでなく、事業として、個人として、成長を支援できるよう取り組んでいきます。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
また次回の記事も読んでいただけるとありがたいです!