大規模開発における"デザイナー視点の"オリジナル振り返り方法
大規模な製品開発(NP1)において、アプリデザインチーム内で実施したデザイナー視点のオリジナル振り返り方法を紹介します。
こんにちは! パイオニア株式会社 デザイン部クリエィティブ推進室に所属している福留です。
昨年発売した「NP1」という商品があります。
NP1は、スマートフォンアプリ「MyNP1」と組み合わせることで、さらにその機能を活用できるのですが、私はこのアプリのデザインリーダーを担当しています。
試行錯誤した開発
開発期間は約1年半、常時稼働のアプリデザイナー4名(+スポット参戦するデザイナー多数)、やり取りするエンジニアや企画者の人数も非常に多く、これまでの自社製品の中でもトップレベルの開発規模でした。
開発中は数々の困難に遭遇したものの、メンバー同士協力し合いながらなんとか工夫し乗り切りましたが、今後も開発が継続するアプリであることから、「諸々の困難ってそもそもなんで起きたんだっけ?」「どうすれば今後防げるのかな?」といったことをしっかり振り返り、よりよい開発につなげたいと考えました。
よくある振り返り手法
そこから、いろいろな本やNoteの記事を読み漁りました。
特に↓の本は大変参考になりました。
いろいろと見てみた結果、よくある振り返りとしては「よかったこと→継続する」「悪かったこと→改善する」ような手法をとることが一般的であることがわかりました。 ※KPT法など
…ただ、まてよ……これだけいろいろなことがあったんだし、ただテンプレート通りにやるだけだともったいないのでは…………?
せっかく開発をやり遂げたのだから、もっと皆で楽しくワークショップ的にやれるようにしたい!!!振り返り自体をデザインしよう!!!!
と考えました。
振り返りで達成したい8つのこと
ということで、振り返りの目的をあらためて考えたのですが、
いろいろ思案した結果、以下の8つを達成しようと決めました。
これらを達成するため、皆を巻きこんで楽しくやれる手法として考えてみたのが、今回紹介するオリジナルの振り返り方法「フリカエリメソッド5」になります。
5つのワークボード
「フリカエリメソッド5」は、AdobeXDで作ったワークボード上で、皆でいじりながら振り返る手法になっています。
なお、ワークボードは5つありますが、それぞれ以下のことを実施します。
1. レキシボード
このボードは、開発のレキシを振り返るために使用します。
開発中に起こったこんなこと/あんなことを書き込みつつ、メンバー間でお互いのよかった点を褒めあうことで、ワークショップ時の雰囲気づくりと他のボードで振り返る際の下地を整えます。
2. レベルアップボード
このボードは、メンバーが開発時にどれぐらいレベルアップしたのかを振り返るために使用します。
開発中に身につけたスキルや知識、逆に足りなかったスキルや知識、メンバー外にも共有すべきナレッジをそれぞれ書き出します。書き出した内容を踏まえて、自身のスキルアップの方向性を定めたり、アーカイブ化するナレッジを抽出したりします。
3. ココロノコリボード
このボードは、「開発を終えたけど実はココロノコリだったこと」を書き出すために使用します。
書き出したものに対して皆で投票し、票の多かったものはアップデート時の改善施策に入れ込むよう働きかけます。
4. KPボード
このボードは、開発中のよかったこと(KEEP)、わるかったこと(Problem)を書き出すために使用します。
書き出した内容はグルーピングし、次のフカボリTAボードで活用します。
5. フカボリTAボード
このボードは、KPボードで挙がった内容をさらにフカボリし、具体的なアクションへつなげるために使用します。
アクションまでの道筋と妥当性があるものについては、チーム内/部門内/部門外それぞれに働きかけ、よりよい開発にするためのワークフロー、マインドセットの定義へと繋げます。
ワークショップをやってみた結果
このワークボードを使い、MyNP1のアプリデザインチームでフリカエリを実施しました。
結果としては「自分のやったことについて、いろいろ褒められてうれしかったし、達成感が増し増しでした!」や「自分の足りないところ、磨くべき方向性を見直すきっかけになりました!」などの意見が出て、メンバーには大変好評でした。
また、振り返った内容から一部改善が開発に反映されており、マネージメント層からも「開発中は見えにくかった作業や現場の悩みを解像度高く知ることができてよかった」という声をいただきました。
あらためて今後のNP1開発においてもぜひ続けていこうとなり、他のプロジェクトの振り返りでもこの方法を使ってもらえるよう布教活動中です。
もともとこの「フリカエリメソッド」は、デザイナー目線での振り返りで使用することを想定して作りましたが、デザイナーだけでなく、またアプリ開発問わずいろいろなプロジェクトに汎用性が利くものになっているかと思います。もし、自身の関わるプロジェクトでしっかり振り返りをしてみたいと思っている方は、ぜひこの手法を使ってみてください。
おわりに
ただ製品を作るだけではなく、開発プロセス自体もデザインすることを目指しているパイオニア株式会社デザイン部では、一緒に働いてくれるUIデザイナーを大募集中です。
気になった方は↓のリンクをぜひご覧いただければと思います。
※イラストは前田デザイン室様のフリー画像を使用させていただいています。